起業の準備⑥個人事業とは
聞いたことはあるけれど、イマイチよく分からないという人も少なくない「個人事業」と「法人事業」の違い。事業の目的などによって選択しますが、それぞれのメリットとデメリットを考えます。
大前提として、個人、法人、営利、非営利問わず、事業を営む者は(細かく言うと事業をしていない者も)法律上の責任を負います。何らかの目的をもって活動している以上、相手や第三者に損害を与えたり、得られるはずの利益を失わせたりしたときは、その責任を問われます。この点では、「個人事業だから責任は軽い」「法人だから重い」ということはありません。
まず「個人事業」のメリットは手続き上の手軽さです。公的な手続きは、
①個人事業の開業届
②青色申告承認申請書(まれですが白色申告の場合は不要)
この2つを税務署に届出るだけです。書式はシンプルで、添付書類も原則不要です。「青色申告」は、大ざっぱに言うと申告に手間はかかるものの、納税額を少なくすることができる申告の種類のことです。ほとんどの事業主がこの青色で確定申告を行います。
開業時点で従業員はおらず、後に従業員を雇用し給与を支払うようになった場合は、
③給与支払事務所等の開設の届出
を提出します。それぞれ指定の書式に住所や名称などを記入し「届出」することで個人事業主として事業を開始できます。「認証」や「登録」もいりませんから、誰でも個人事業主になれるのです。未成年者でも外国人でも可能(在留資格で制限あり)です。事業をやめるときは、廃業届を出せば基本的には終わりです。
デメリットは、手軽に事業を始めたり廃業することができるため、取引相手としての信用力が法人に比べ低いことや、税のメリットの面で法人には及ばない点などです。しかし対事業主との取引ではない業種や、利益が1,000万円未満程度であればこれらのデメリットはさほど考慮する必要はありません。
店舗や事務所などの物件契約にあたって「法人のみ」としている場合や、行政機関の委託事業で「法人のみ、または法人設立が前提」との条件が付いていることもありますので、規模の大きな不動産を賃借する場合や、公共事業を主要業務とする業種は注意が必要です。また、介護事業など法人であることが許可の要件になっている業種も少なくありません。
開業当初は個人事業でスタートし、軌道に乗り売上げも大きくなった段階で法人化することも一般的によくあるケースです。法人のメリット、デメリットについては次回ご紹介します。